Nikon F4


ニコンのひと桁(フラグシップ)機で初のAF機。
AF機としては勿論のこと、MFにおいても最高の操作性を誇る。

写真は「AFテレコンバータ・TC16S(F3AF用)」付。MFレンズでAF作動が可能になる

 1977年にピント合わせの自動化に成功した「コニカ・C35AF(通称:ジャスピンコニカ)が大ヒット商品となり、それから各社共にオートフォーカス機構(以降AFと表記)内臓のカメラが主流となっていくのだが、これはコンパクトカメラでの話である。
 レンズ交換式の35ミリ一眼レフカメラにおいても、AFを実現させる為の研究が以前から各社で極秘に行われていた。はっきりした年月は失念したが、ニコンとキヤノンが、試作参考品としてフォトキナ等の展示発表会にて披露した事があったように思う。
 実際に商品として発売された最初期のAF一眼レフは、ペンタックスME-F(1981年)を筆頭に、オリンパスOM-30(1983年)、ニコンF3AF(1983年)、キヤノンT80(1985年)等があるが、AF動作させるには専用レンズや専用のオプションパーツが必要で、性能的にもこなれておらず、決して使い勝手の良い物とはいえなかった。
 今までに発売した交換レンズとの互換性を捨てて、全く新規のレンズマウントを採用して勝負に出たミノルタα-7000が大ヒット商品になり、キヤノンも従来のFDマウントに見切りをつけEOSシリーズを展開した。
 ミノルタ・キヤノンが従来の規格を捨てて、新規格でAFカメラを開発していったのに対し、日本光学(現:ニコン)と旭光学(現:HOYA(株)PENTAX事業部)は、従来からのレンズ資産を活かせるよう、AF化に伴うレンズマウントの変更を是としなかった。
 旭光学は1975(昭和50)年に従来のM42(ねじマウント)からKマウントに変更した経緯があり、それから僅か10年程で「また」レンズマウント変更・・・という訳にいかない事情があった。ニコンは元々ストイックなまでに「信頼性を損なわない互換性」を開発の最重要課題としており、会社・ユーザー共に「安易な規格変更は許さない」という気風があり、「伝統のFマウント」でのAF化を模索したのであった。
 ニコンが発売した最初のAF一眼レフはF3AFである。
 最初期に発売されたAF一眼の中で流石は日本光学製、完成度はかなり高いのだが性能最重視で採算度外視の高コスト、レンズの重量とサイズ、そして価格が災いして出荷台数が少なかったので、AF駆動モーターをレンズ側からカメラ本体側に移し、レンズマウントは従来のままで、AF等制御信号の連動ピン等を改良してAFシステムを完成させ、その規格は現在も踏襲されている。
 よって「F3AF」のAFシステムは、出荷台数の少なさ故に日本光学にとって「例外扱い」なのだが、それでも「F501」と「F4シリーズ」は、F3AF用と以降標準仕様となったレンズ群の両方が「そのまま」使えるのは、日本光学ならではの所作といえよう。


F4はAPS用のレンズを除き、最初期〜最新のレンズまで、改造なしにそのまま使用できる。
その為にレンズマウントには、現行機種にない接点や構造があるのだ。

 よくF4のAF動作が遅いと云う人がいるが、私が実際に使ってみてAF動作が遅いと感じたことはない。動いている被写体を追随するAF作動は、後に改良されたAFセンザー搭載のカメラのようにはいかないが、それでも動かない被写体に対してのAF精度は、現行のカメラと較べてもけっして劣らない。そして意外に暗い場所でもピントを正確に合わせるのだ。
 そしてAF機でありながら、AF以上にMF(手動)でのピント合わせも使いやすいのだ。このような特徴を持ち合わせているのは、CONTAX・AXと本機だけであるが、機械としての堅牢性・信頼性は云うまでもなくF4の圧勝である。


シャッター速度や露出補正などの全ての設定がダイアル操作式。
取扱説明書がなくとも設定がよく解る。


フィルム巻戻しもモーター駆動ながら、電池切れや故障など緊急時には手動での巻戻しも可能。
巻戻し動作が目視できるのも心強い。巻戻しスイッチもR1・R2の2操作で、誤作動の心配もない。

 数あるニコン製一眼レフカメラのなかで、APSカメラであるプロネア用のレンズを例外として、稀少なF3AF用レンズを含めて殆どのレンズがそのまま使用できるのは、F4シリーズのみである。交換レンズの互換性という観点では、今でもニコンカメラ史上最強の存在なのだ。
 唯一残念なのは、本体の外装が強化プラスチック製で、強度は問題ないのだが、使い込んでいくうちに、表面がプラスチック特有の「安っぽいテカリ」が目立つのが、個人的に厭なのだ。勿論使用上は、全く問題ないのだが・・・。
性 能 表

 メーカー  日本光学工業(現:ニコン)
 形  式  35ミリフォーカルプレン式一眼レフ
レンズマウント  専用バヨネット(ニコンFマウント)
ファインダー   ペンタプリズム交換式一眼レフファインダー
 視野率100%
 シャッター  電子制御・上下走行式フォーカルプレンシャッター
 シャッター速度  (P・S時)30〜1/8000s、 (A・M時)8〜1/8000s X=1/250
 発 売 年  1988年

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