CONTAX RTSU

 ヤシカは昭和40年代にカメラの機構を積極的に電子化を推し進め、「ヤシカ・エレクトロ35」シリーズが爆発的なヒット商品として大成功を収めたのだが、どうしても「大衆機のメーカー」というブランドイメージを払拭できずに苦しんでいた。

一方の西ドイツの最大手且つ名門「カールツァイス」傘下のカメラメーカー「ツァイスイコン・フォクトレンダー社」は、近年価格・性能共に実力をつけ、世界を席捲しつつある日本製カメラに、性能では絶対の自信があっても、販売価格、製造コスト(原価率)、生産の合理化等で、とても太刀打ちが敵わず、カメラ・レンズ部門の出荷台数・売上げが落込み、結論として1971(昭和46)年に、カメラ生産から撤退を表明した。

そうした経緯でY社に、かの西ドイツの名門中の名門「カール・ツァイス」から業務提携の話がきて、その当時としては異例とも云える短い期間で、両者の間に合意文書を交わしたという。

ツァイス社は、日本国内の他メーカーにも業務提携の打診をしていたらしい。伝聞では旭光学(現:PENTAX)にも提携の話を持ちかけたのだが、何しろ提携打診の相手方は、かの「レンズの帝王」の異名を持つツァイス社で、社長以下首脳陣も畏れをなして「ビビリまくり」で話にならず、先に記した電子制御など先進の技術に明るいY社に打診し話が纏まったのは、ある意味「成る可くして成った」のかもしれない。

歴史に「If」はタブーあるが、もしツァイスの提携先が旭光学や他メーカーであったなら、カメラ業界の勢力図は今頃どうなっているのだろうか。
 前置きが長くなってしまった。業務提携を締結後の製品開発第1号が「CONTAX RTS(初代)」である。

製品開発に当たり、ツァイス側からの要求は「開発から発売までの期間が2年」という非常に厳しい条件だったという。それでもY社の技術陣が「受けて立つ、やってみせる!!」と気合をいれ、幾多の困難を乗越えて完成させていったそうだ。

しかし両社の間でお国柄も違えば設計や品質に関する思想も当然違い、品質管理は日本のほうが断然シビアだったが、光学性能は当然ツァイスのほうがシビアだったという。
 そしてカメラ本体のデザインが「ポルシェ」が担当することになり、シャッターダイアルが左手側にあったり独特のデザインで内部パーツのレイアウトも大変だったそうだ。なかでも一番苦労したのが、独特の半光沢・黒色塗装で、
「何回も塗装を重ねると耐久性は向上するが、本体の稜線が乱れてしまうので、何とか少ない塗り回数で耐久性を維持しながら美しい仕上げとするのに、大変な試行錯誤があった」らしい。
 そういった幾多の苦労が実を結び、当初のツァイス側の開発条件である2年という期間での製品化を、見事に達成させたのである。

こうして1974(昭和49)年のフォトキナ(西ドイツ・ケルン市で開催させる世界的なカメラの見本市)で発表され、大センセーションを巻き起こし、その1年後に「CONTAX・RTS(初代)」が発売された。
 発売開始後もユーザーからの評判も上々で、云わば社運を賭して発売した初代RTSは、セールス的にも成功を収めたのだが、発表から時間が経つにつれ、不満点・改良点が浮かび上がってきた。
 そこで後継機となる「RTSU」型の開発に着手するにあたり、外観は殆ど変更がないが、見えない内部を中心に改良がなされている。
1、シャッターの改良。電子シャッターの制御に水晶発振子を採用して精度を上げ、シャッター幕も布幕からチタン幕に変更し、軸受の13箇所にボールベアリングを採用して、耐久性を大幅に向上させた。

2、内臓露出計の受光素子をCdSからSPDに変更し、応答性と測光動作範囲を拡大させた。

3、ファインダー内の情報表示がデジタル表記となり、暗い場所での視認性を向上させた。

4、ファインダー視野率の向上。92%→97%に改良された。

5、本体前面にある露出計起動ボタンとAEロックレバーを同軸に設置した。



6、セルフタイマーを、従来の機械(ゼンマイ)式から電子式に。LEDの点滅で動作状況が確認しやすくなった。

7、外付けストロボ用に、シンクロターミナルの新設。これはプロ機として必須の端子である。


シンクロターミナルに「CONTAX50周年」の記念キャップが付いている。
(限定品・純金製)
 こうして外観のよさを損なわず、カメラとして初代と較べて大幅にグレードアップを施されたのだ。特にファインダーの見えの良さは、歴代CONTAXのなかでも一番の秀作であると評するマニアが多い。


 

性 能 表

メーカー   (ヤシカ→)京セラ
形  式  35ミリフォーカルプレン式一眼レフ
レンズマウント  専用バヨネット(ヤシカ・CONTAXマウント)
ファインダー  ペンタプリズム固定式一眼レフファインダー
視野率92%、スクリーン交換式
シャッター  左右走行式チタン幕フォーカルプレンシャッター
シャッター速度  (マニュアル時)4s〜1/2000秒 X=1/60
発 売 年  1982年


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